LOG IN

腕をあげたな越前良平!!

by Tomohiro OYA

先日御茶ノ水Blue-Gさんから「Echizen Guitar」のプレゼンテーションモデルが出来上がりました!という連絡を頂いたので早速弾きに行った。結論から言うと素晴らしかった。腕を上げたなー!と叫んでしまった。

プレゼンテーションモデルって基本的にはてんこ盛りだ。高級マテリアルと手間をふんだんにかけお化粧を散々施したビカビカなモデル。越前良平くんの作った今回のプレゼンテーションもインレイや高価なロジャーズのペグ、師匠のSergeiさんがたまに引っ張り出してくる”ブラックハカランダ”のサイド・バックなど豪華で高価な仕様だ(インレイはOGAWA INLAY CRAFT小川貴之さんの素晴らしい仕事だ)。ただし、越前さんの作るそれは彼の凛とした美意識が貫かれていて、派手一辺倒ではない。プレゼンテーション・モデルとしてはシックで落ち着いた方であろう。

日本人が好きなのは”地味な見た目でモンスターサウンド”。これは自分が某楽器店で耳にしたお客さんの井戸端会議である。ギラギラな装飾を施しいたこれ見よがしなD-45的なモデルよりD-28みたいなどこにでもあるような見た目のもので弾いたら凄い音がするってのがみんな好きなんだよ、とのこと。この話、聞いたのは15年前くらいだと思うけど妙に納得した。でも越前さんのギターはそういうもったいぶったものでもない。

彼の美意識が貫かれたそれはまるで一流の寿司屋で食べる寿司のようだ。緊張と喜びが同居する。

彼の作品が最初のリリース作品から素晴らしい完成度を持っていることは先に話したとおり。そこはすでに師匠を超えているかもしれない。であれば音はどうか。”こっちが師匠の楽器なんですよ”、越前さんの噂を聞きつけて弾きに来たお客さんに丁寧な説明をする店員さん。早速弾くお客さん。”ああ、予算があれば・・・。やっぱり師匠は違いますね”。オレもそう思った。彼が作品をリリースし始めた頃は音に関してはまだ師匠に及んでいなかったし、彼もそれを自覚していた。Sergeiさんは全てを把握して作っている、と言っていた。4年ほど前、2013年頃の話だ。

2016年、久しぶりに東京ハンドクラフトギターフェスに行った。そこで衝撃を受けたのは以前話したOGINO GUITAR。でもその並びにあって行列で弾くことはおろか見ることすらままならなかった越前さんの新作ギターをその後お店で弾かせていただいた。そこで以前と違う感想を持った。以前のすべてがカチッとした感じから開放されていた。見た目はまったく変わっていないのだけれど、緻密な感じが少し緩くなった、と言ったらネガティブな捉え方をされてしまうかもしれないけれど。許容範囲が大きくなったというか。サウンドも随分と開放的になった。変わったな、と思った。

木目が特徴的なハカランダ。ソバージュ柄ということだが個人的にはStreaming Jacarandaと呼びたい。ネックも虎目が入った素晴らしい材を使用。

そして今回のPresentationモデル。まず持った瞬間が違う。軽くなった。これは使っている木材が固くて、薄く仕上げてあるという必然から来るのかもしれない。ただ、物理的い軽いということもあるけれどなんだか軽やかになった。弾くとまずその素早い反応に嬉しくなる。そして各弦の音色も太くゴツンとしながらもギラッとした倍音もある魅力的な音で少ない音数で十分満足できる楽器だ。よだれ出そうになった(汚してはいかんよ)。サウンドに開放感があってどこまでも広がっていきそうな感じだ。できたての新鮮さと共に枯れた味わいがあるのはサイドバックのオールドハカランダのサウンドを充分に引き出せているからだろうか。音の深みはトップ材のクオリティーの高さとそれを引き出す技術か。今回のトップ材はベアクロー・ムーン・ジャーマンスプルース。ムーンスプルースはここ数年取り沙汰されている材で、月齢(季節と月の満ち欠け)に応じてその伐採日を決め、伐採した材のことだそう。 燃えにくい、カビや腐食に強い、害虫に強い、 割れ・狂いが生じにくい→よって長く使えるいいとこだらけの素晴らしい材らしい。神秘的で少々眉唾な感もあるが、これは建材の世界ではかなり古くから言われてきたことだそうだ(詳しくはデジマートマガジン 木材〜トーンウッドの知られざる世界 第3回 闇夜に吠えるスプルース 文:森 芳(FINEWOOD)をご覧ください)。嘘みたいな話ですが、実際音が良いと皆さん口にする(かの巨匠アービン・ソモジ氏も言っておられる)。内緒にしたくなるくらい素敵な情報じゃないか(笑)。

ベアクロー・ムーン・ジャーマンスプルーストップ。ブリッジのインレイもエレガント。

越前さんのギターは初めて見た時から完成度が異常に高く、驚かされてきました。そして今回あらたにまた驚かされました。これまでは彼の技術力の高さに目が惹きつけられてきました。それが今回は音に惹きつけられました。抱えたときの感触に惹きつけられました。そうなると他のことは正直どうでも良くなってしまう自分ではありますが、もちろん技術力の高い仕事はこれまで通り。シックなブラックマザーオブパールでハカランダ・バインディングを装飾、ロゼッタにはさらに吉野杉も使いメイド・イン・ジャパン、アイデンティティーをさり気なくアピール。このあたりの繊細さは心憎いばかり。でもやはり楽器なので音なのです。すでに人気製作家である彼にこんなことを言うのもなんですが、一皮剥けた、腕を上げたと言いたいし、大化け寸前と言えるかもしれません。それほどに今回のモデルには魅力が詰まっていましたね。まさに”Presentationモデル”でありました。

今回あらためて越前さんのポテンシャルを実感して、もっとトップの面積の大きなギターを作ってみてくれないかなとか、自分が所有できるなら演奏したくなる楽曲はこれかな?とか色々妄想も膨らみました。とはいえ、今回のモデルが突出していて実は他は、、、ということも楽器ではママあることです。そこは見守っていかなくてはなりませんが、ただこれからの越前良平、Echizen Guitarからはますます目が離せなくなりました。

工房での製作過程がBlue-Gさんのブログでご覧いただけます。Echizen Guitarsの美しいサイトはこちらです。


Tomohiro OYA
OTHER SNAPS